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バークシャー・ハサウェイが有する3つの強み

【バフェットからの手紙 2010年 7~8ページ目より引用・翻訳】

チャーリーも私も保険以外の事業からの1株あたりの収益を、それなりの比率で上昇させ続けたいと考えていますが、その仕事は、運用資金が大きくなるにつれて、非常に難しいものになっています。

私たちは、現在所有する事業から良い収益をあげる事とあわせて、より一層主要な事業となる大きな買収をする必要があります。

準備は出来ています。象を仕留めるための銃には弾丸を込めました。引き金を引く指はウズウズしています。

 

規模の大きさという足かせはあるにせよ、それを埋め合わせるだけの重要な優位性を、私たちは2、3有しています。

はじめに、バークシャー傘下には、強い忠誠心をもった、真に熟練した経営陣がいます。

バークシャー傘下のCEOたちの大半は、経済的に独立出来るだけの豊かさを手に入れていますが、好きだから仕事をしている人たちです。
彼らは喜んで仕事をしているのであって、決して報酬目当てではありません。

なぜなら、彼らにより楽しい仕事を与えられる人は、誰もいないのですから。彼らは離れていくことが出来ないのです。

バークシャーでは、経営陣は、彼らのビジネスを推進することに注力することが出来ます。
彼らには、本社でミーティングをしたり、資金繰りや投資家の嫌がらせに関する心配をしたりする必要はありません。

彼らは2年に1度、私から手紙を受け取り(このバークシャーの経営陣向け手紙は後で掲載します)、彼らが望むなら私と電話で話をします。
去年、1度も私と話をしなかった経営者もいますし、ほぼ毎日話をした経営者もいます。

私たちは、プロセスよりも人を信頼しています。

「良い人を雇い、管理はしない」という掟は、彼らにも私にも合っているようです。

 

バークシャーの優位性の2つ目は、事業収益の再配分に関連することです。

毎年の収益から、事業ごとに必要な再投資額を差し引いても、バークシャーには多額の資金が手元に残ります。
大半の企業は、その余剰資金を、自社が既に運営している事業領域に限定して再投資するものですが・・・
それにより、しばしば彼らは、ちっぽけで収益力があまり良くないビジネスに、とらわれてしまうのです。

収益機会の数が少ない中での競争は、非常に厳しいものになりがちです。

売り手は、多数の男の子が参加するパーティーの中で唯一の女の子であるかのように、手を上げることが出来ます。
そんな不均衡な状況は、売り手、すなわち女の子にとっては素晴らしいことですが、男の子にとっては過酷なものです。

バークシャーでは、投資、すなわち資本の配分を行うにあたって、制度的な制限は何もありません。
チャーリーと私は、その企業の将来が自分たちの能力で理解できる範囲であれば買収します。

1965年にバークシャーの経営を開始した際、私はこの利点を利用しませんでした。

バークシャーは、すでに10年間にわたって大きな損失を出している繊維事業を行っているだけでした。
私が出来た最も馬鹿げた行為は、既存の繊維事業のオペレーションを改善して、そして拡大する「機会」を追求することでした - それは何年もの間、私が実際にしてしまったことですが。。。

極めつけに、私はさらにもう1つの繊維会社を買ってしまったのです。 アァァァーーー!
最終的に、私は保険そやその他の事業に出会い正気に戻ることが出来ました。

1つの事業を他の事業と対比させることに加えて、私たちはその事業を、上場されている株式とも対比して、その価値を測ります。これは大半の経営者がやらないことです。

しばしば、事業の方が、株式や債券への投資から得られる収益と比べて、ばからしい位、高い値段を付けられます。 このような時、我々は株式や債券を購入し、そして私たちの時が来るのを待ちます。

資本配分における柔軟性は、これまでのバークシャーの成長を大きく支えてきました。

私たちが所有する事業のうち、最高の事業でありながら、収益の再投資機会が限定されている、シーズキャンデーあるいはビジネスワイヤーが良い例です。
上記2社から、私たちは投資資金を得続けてきて、そして、それはBNSF鉄道買収資金の一部になったのです。

 

最後にバークシャーの3つ目の優位性として、他社にはないバークシャーの企業文化があげられます。
株主であるあなたの代理を務めるバークシャー傘下の経営者たちは、自分がオーナーであるかのように考え、そして行動します。給料は受け取りますが、彼らにはオプションや自社株といった追加の報酬はありません。
また大半の上場企業で提供されているような、役員向け賠償責任保険も提供しません。

もし彼らがあなたの金でへまをしたら、彼らは同様に自らのお金を失うでしょう。

私(ウォーレン・バフェット)自身の持株抜きで、バークシャー傘下の経営者達とその家族は30億ドル以上のバークシャー株を所有しています。
それ故に、バークシャー傘下の経営者達は、オーナーとしての目でもってバークシャーの行動と結果をモニターします。 あなたも私も彼らのような経営者がいることは、本当に運が良いです。

このオーナー視点をもって経営を行う文化は、我々のマネージャーにも普及しています。
それは、多くの場合、一族で所有してきたビジネスの、買収者としてバークシャーを探し求めた人々です。
彼らはオーナーの考え方をもって我々のところに来ました。私たちは彼らに、そのオーナー意識を持ち続けられるような環境を提供します。自身のビジネスを愛するマネージャーを持っている利点は小さくありません。

 

企業文化とは自己増殖するものです。

ウィンストン・チャーチルはかつて「あなたは、あなたの家を形づくります、そしてそれらはあなたを形づくります。」と言いました。

この知恵はビジネスにも当てはまります。 官僚的な行動がもっと多くの官僚制を生じさせます。過度に立派なオフィスがごう慢な行動を誘発します。

バークシャー本社の賃貸料は年間270,212ドルです。 さらに、家具、芸術、コークディスペンサー、ランチルーム、ハイテク機器といったオフィス設備への投資は301,363ドルでしかありません。
チャーリーと私が、それが我々自身のものであるかのように、あなたのお金を扱う限り、バークシャーのマネージャー達も同様に、あなたのお金を注意深く扱ってくれることでしょう。

バークシャーの報酬規定や株主総会、そして年次報告書さえ、そういった企業文化を強化する意図でもって行われています。

この文化は毎年強化されており、そして、チャーリーと私が現場を去ったずっと後でも、不変でしょう。

 

うまくやるためには、私たちはこれまでに説明した全ての強みが必要不可欠です。 バークシャー傘下のマネージャー達はその強みを発揮するでしょうし、あなたはそれを当てにすることができます。

しかしチャーリーと私が、資本配分(投資)において成果をあげられるかどうかは、買収の競争環境に依存する面もあります。私たちは最善の努力でもって、その業務にあたります。

この段落ではバークシャーが有する3つの強みについて説明しています。
バフェットによると、その強み3つとは以下に集約されます。

それでは、この段落の最初から詳しく見ていくことにしましょう。
まず、各ニュースでも大きく取り上げられた、以下の表現です。

「私たちは、現在所有する事業から良い収益をあげる事とあわせて、より一層主要な事業となる大きな買収をする必要があります。
準備は出来ています。象を仕留めるための銃には弾丸を込めました。引き金を引く指はウズウズしています。」

この表現を、日本経済新聞は「新興国の企業買収目前」といったニュアンスの報道を行っていましたが、私は違うと思います。バフェットが買収に対して意欲的なのは、毎年のことです。
しかし、買収的には意欲的である一方で、「自分達が理解出来ないものには投資しない」という方針は一貫して貫いているため、バークシャーでは傘下の企業から得られた収益が、毎年積み上がってしまっているというわけです。
その証拠に、毎年、バフェットからの手紙には、買収方針というページに、「良い事業だと判断したら5分で買収を決断できる。」と書かれています。

傘下企業の業績は好調で、手元に資金は積み上がっているものの、バフェットの投資基準に合致するような大型の買収案件がなく、運用リターンを確保し続けることが困難になりつつあるというのが、バークシャーの実情であると思います。
当然バフェットもそのことは感じていて、それ故に、買収に積極的なバークシャーをアピールしているのであって、決して具体的な買収案件が既に目前にあるわけと、私はこの段落を読んで感じました。

 

次にバフェットが挙げた「3つのバークシャーの強み」について考察します。

1番目の強み「優秀な経営者を傘下に抱えていること」は、これまでもバフェットが常々、口にしてきたことです。バークシャーは、買収した企業の企業名を変えたり、経営陣を入れ替えたりといったことをしません。
「優秀な経営者が既にいる、最高の事業を適切な値段で買う」
これがバークシャーの買収の方針です。

日本で広く行われている買収と、バークシャーの買収とは全く違うものであることが、分かると思います。
例えば、現在、日本で買収に積極的な会社として、楽天があげられますが、楽天は買収した会社は、名前を変えて経営陣を送り込むというスタイルをとっています。
これはどちらが良い、どちらが悪いというものではなく、経営戦略の違いであるといえるでしょう。

そして、この段落では、具体的に日々どのようにして傘下のCEOたちをマネジメントしているのかについても言及されています。
傘下の経営者達には干渉しない、長期にわたって企業の所有者であり続けることを約束するというのも、全ては、「優秀な経営者が経営に集中し、最高のパフォーマンスをあげられる環境を用意する」ことを目的としているのでしょう。
これも、優秀な経営者が既にいる事業を買収するという方針と、非常にマッチした戦略だと思います。

 

2番目の強みとして「資本配分、すなわち収益の再投資を柔軟に行えること」があげられています。
「買収案件が少ない業界においては、売り手優位となる、つまり買収を行なうものにとっては不利な状況になりやすい。」というのは、全ての経営者が心に留めて置くべき言葉だと思います。

バークシャーは、会社として買収する事業分野を絞るといった制度を採用していないため、最も価値があると考えられる買収を柔軟に行なうことが出来ます。
ただこれは、長期的な事業の価値を、正確に分析出来るバフェットがいるバークシャーだから出来ることであって、そういった人材がいない会社がやると大火傷することは、歴史が証明しています。
日本でも、名だたる大企業が買収を通じて事業の多角化を行っても、大失敗に終わるケースが大半です。

また、バフェットは、企業をまるごと買う、すなわち買収対象を比較検討するだけではなく、それを上場されている株式とも比較します。
「しばしば、事業の方が、株式や債券への投資から得られる収益と比べて、ばからしい位、高い値段を付けられます。」という表現はつまり、株式市場が冷え込んだ状況を意味します。

そういった局面においては、バークシャーは買収ではなく、上場株への投資も積極的に取り組むということです。実際に、これまで幾度と無く、株式市場全体の暴落や、一時的な企業の不祥事といったタイミングで、バフェットは上場株を大量に買付けしています。
有名な例としては、コカコーラやアメリカンエキスプレスがあげられます。

投資に対する考え方としては非常にシンプルで、価値に対して著しく安い価格がつけられていて、その投資を自分たちが理解できると踏んだら、どんな投資対象であろうと投資を行なうということです。
実際、バフェットは株式投資家として有名ですが、国債、社債、デリバティブ、通貨、商品といった投資対象にも投資を行っています。

 

3番目の強みとしてバフェットが挙げた、「株主視点でもって事業経営にあたる企業文化が根づいていること」の部分も、すべての経営者が熟読すべき事柄が書かれていると思います。

これらの考えは、すべての上場企業経営者が理解しておくべきことです。

なぜなら、株主重視の経営が批判されがちなここ日本においても、「会社は株主のものであり、経営者は株主から任命されて事業経営にあたっている存在である。」というのは、紛れもない事実なのですから。

 

そして最後に書かれた、「企業文化とは自己増殖するものです。」という一文は金言だと思います。

ウィンストン・チャーチルの言葉、「あなたは、あなたの家を形づくります、そしてそれらはあなたを形づくります。」を引用し、企業が豪華なオフィスを構えることに対する意見を述べています。

2010年末時点で時価総額が20兆円もあるバークシャー本社の年間家賃がたかだか2300万円程度という事実は、非常にインパクトがあります。
税引き後で1兆円以上もの収益を稼ぎ出す会社の家賃とは到底思えません。

バフェットがいかにバークシャー株主のお金を大切に扱い、そして、そういった姿勢を企業文化としてバークシャー全体に根付かせ続けようとしているかが、よく分かります。

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