この世の中に株式市場というものが全く存在しない場合、株式投資は「事業への投資」という側面以外は有り得ません。
しかし、株式市場というものが存在することによって、株式投資は「事業への投資」という側面に加えて、新たな要素が加わることになります。
それが、ケインズがいうところの「美人投票という側面」です。
株式市場が存在することによって、多くの市場参加者が「事業への投資」という側面を忘れていくプロセスを、以下で説明していきます。
(1)株式投資を事業への投資とみなす場合、投資先の企業の将来性を見抜くことが非常に重要になる。
(2)その企業の将来性は、「提供する財やサービスに対するニーズ」「経営者の手腕」「競合他社の状況」「国全体の景況感」などに依存するが、これを知るための手掛かりとして我々に与えられているツールは貧弱であり、企業の将来性についてほんの一部の情報しか得られない。
(3)それに加えて、株式市場というものが存在することによって、所有と経営の分離が進み、より多くの市場参加者が出てくることになるが、それらの市場参加者は必ずしも企業の将来性をきちんと把握しているとは限らない。
(4)それどころか、間違った噂や思惑で将来性が語られることもしばしばであるため、企業の本当の将来性ではなく、むしろ、そうしたノイズによって株価が変動することもあり得る。
(5)このような状況下では、企業実態を把握して投資するのではなく、短期間の値動きを利用して儲けたいと考える市場参加者が出てくるのは全く不思議なことではなく、むしろ割合としてはそちらのほうが圧倒的に多い。
(6)その結果、企業実態を反映した株価が常についているとは限らないし、それどころか、乖離していることのほうが圧倒的に多い。
以上のことから、現実には、企業価値に着目する投資手法も値動きに着目する投資手法も存在するわけです。
割安株netでは、企業価値と価格のギャップに着目する投資手法を説明するのですが、だからといって、株価の値動きに着目した投資手法を否定するわけではありません。
なぜならば、多くの市場参加者が短期的な株価の値動きに興味を持っているというのは、株式市場においては一つの本質だからです。
だから、「企業価値と株価が乖離しているのはおかしい」と嘆くのは筋違いなのです。
割安株投資では、その企業価値と株価が乖離していることが投資リターンの源泉になるわけですから、こうした事実を許容した上で、賢明な意思決定が求められるのです。