企業分析(もしくは、コーポレートファイナンス)の標準的なテキストによると、将来の予想収益を基に企業価値を推定するためには、その企業が存続している期間に得られる全ての予想収益を現在の経済的価値に引き直すという形で求められます。それが収益還元法の基本的な原理です。
そこで、収益還元法を理解するにあたって、「現在価値」と「将来価値」の概念を理解しなければなりません。
「現在価値」や「将来価値」という言い方をすると難しく感じるかもしれませんが、最初は銀行に預金をしたときのつもりでいれば良いでしょう。
早速ですが、以下の問題を考えてみましょう。
【問題1】
100万円を受け取ることが出来るとすれば、どちらが良いですか?
(1)今すぐに受け取る
(2)1年後に受け取る
これは、絶対的にどちらが正しいという問題ではありません。前提の置き方によって変わるからです。「買いたいものがあるから今すぐに100万円を受け取りたい」と考える人もあれば、「今すぐに100万円を受け取ると無駄遣いする可能性が高いから1年後に受け取りたい」という場合もあります。
ここでは、そのような「気分」の問題は排除して、純粋に「運用」という観点から見た経済的効果だけを考慮した場合にどうなるかという点に焦点を当てます。
例えば、銀行に預金すれば5%の金利がつく場合を考えます。このとき、今すぐに100万円を使わないにしても、今すぐに100万円を受け取って銀行に預金したほうが5万円の金利を稼ぐことができます。
したがって、「同じ金額であれば早く受け取れるほうが良い」と、ここでは考えるのです。
この5%という数字を「割引率」と呼び、「割引率が5%のとき、現在の100万円は1年後の105万円と価値が等しい」という言い方をします。さらに、割引率という言葉を使って、「現在価値」と「将来価値」を定義すると以下のようになります。
現在価値:
「割引率が5%のとき、1年後の105万円を現在価値に引き直すと、100万円になる」
将来価値:
「割引率が5%のとき、今の100万円を(1年後の)将来価値に引き直すと、105万円になる」
【問題2】
次のどちらを選択しますか?
(1)今すぐに100万円を受け取る。
(2)1年後に110万円を受け取る。
問題1を踏まえれば、そんなに難しくありません。割引率が10%以上であれば今すぐに受け取ったほうが良いですし、割引率が10%未満であれば1年後に受け取ったほうが良いです。
ここで注意されたいのは、割引率というのは、必ずしも市場金利(銀行預金の金利や、国債の利回り)である必要がないということです。
投資家が今すぐに受け取れる100万円を1年後に保留しても良いと考える金額が110万円であるという場合も、また、割引率10%であると考えて良いのです。