前回説明した収益還元法に基づく企業価値評価モデルを再掲載します。
V = E(1)÷(1+R) + E(2)÷(1+R)^2 +・・・+
E(T)÷(1+R)^T +・・・+
[E(N)+B(N)]÷(1+R)^N
――――(A)
V:企業価値
N:企業の存続期間
E(T):期間Tにおける予想収益
B(N):事業の清算時に還元される残余財産
R:割引率
今回は、上記のモデル(A)をものすごく大胆に単純化して、将来の収益力をベースにした企業価値算出の本質に迫ります。紹介するのは、「定率成長モデル」と呼ばれるモデルです。
定率成長モデルで置く仮定は極めて単純です。
【定率成長モデルの仮定】
(1)事業の継続を前提とする(永久に事業を精算しない。すなわち、N=∞)
(2)成長率は一定である(成長率をGとしたとき、E(T+1)=E(T)×(1+G))
(3)割引率は利益成長率よりも大きい(R>G)
V
= E(1)÷(1+R) + E(2)÷(1+R)^2 +・・・+ E(T)÷(1+R)^T +・・・
= E(1)÷(1+R) +
E(1)×(1+G)÷(1+R)^2 +・・・+ E(1)×(1+G)^(T-1)÷(1+R)^T +・・・
=
E(1)÷(R-G)
定率成長モデル・・・ V = E(1)÷(R-G)
【数値例】
定率成長モデルの仮定が概ね妥当である企業について、来期予想される利益が100、割引率が10%、利益成長率が5%のとき、企業価値は、V=100÷(0.1−0.05)=2000。
したがって、2000以下の価格で購入できれば、長期的に見て、10%の投資リターンを達成できる可能性が高いと判断することが出来る。
もちろん、将来の予想収益の系列を利益成長率という一つのパラメータに押し込んだだけに過ぎないという批判もあります。また、利益成長率は、その企業を取り巻く様々な事業環境を勘案した上で、最終的には主観的に判断せざるを得ません。
利益成長率の推定が困難だということは承知の上で、敢えてこの定率成長モデルを紹介したのは、収益還元法をに基づいた企業価値の推定の本質に迫ることができるからです。これについては、「定率成長モデルとPER」「定率成長モデルとPBR」で説明します。
最後に、定率成長モデルが価値評価として妥当であるための条件を述べたいと思います。定率成長モデルで置いた3つの仮定のうち、最初の2つがキーとなります。
(1)事業の継続を前提とする
事業の継続を前提とする以上、事業が存続できるだけの事業基盤や財務基盤が重要となります。事業基盤や財務基盤が不健全な企業の場合、N=∞とする妥当性に欠けます。このような場合、定率成長モデルで得られた結果を相当割り引いて考えるか、事業の精算を前提とした純資産額法に基づく企業価値推定を用いるべきです。
(2)利益成長率は一定である
利益成長率が一定であることを前提としていますので、そうでない企業についてについては、正しい判断が出来ない可能性があります。例えば、景気循環株のように、景気の循環に応じて売上も利益も上下動するようなタイプの企業に対しては、定率成長モデルを適用することは相応しくないことに注意すべきです。