定率成長モデルを再掲載します。
【定率成長モデル】
V = E(1) ÷ ( R − G )
―――(A)
PBRの定義そのものは非常に単純で、[時価総額] ÷ [株主資本]です。
ここで、定率成長モデル(A)の両辺をB(0)で割ると、定率成長モデルのPBRバージョンが得られます。(ここでは、B(0)を使っているので、実績PBRであることに注意して下さい。)
【定率成長モデルのPBRバージョン】
PBR = V÷B(0) = E(1)÷(R−G)÷B(0) = [E(1)÷B(0)]÷(R−G) = [ROE]÷(R−G)
―――(B)
上記から、事業の永続を前提とする場合におけるPBRでの割安・割高判断は、「ROE(株主資本当期利益率)」と「割引率」と「利益成長率」が重要なカギを握っていることになります。この中では、とりわけROEが重要になってきます。
PBRとROEの関係を語るにあたっては、以下のような、2つの視点が考えられます。
(1)ROEからPBRの妥当性を見る
純資産額法に基づく企業価値評価におけるPBRでは、将来の収益力を一切考慮しないことを前提にしていました。
今回は、それとは対照的に、事業の永続を前提とした場合のPBRです。この場合、「PBRが低い企業のほうが割安である」と判断するのが妥当であるためには「ROEと割引率と利益成長率が同じくらいであるならば」という、暗黙の前提条件が必要です。
例えば、ある人は「PBR1倍の企業はPBR2倍の企業よりも割安である」という言い方をするかもしれません。今すぐに事業を精算するならば正しいかもしれないません。
しかし、事業の永続を前提とするならば、「PBR2倍の企業のほうがPBR1倍の企業よりも、遥かに事業基盤も経営陣による資本政策も優れていて、その結果ROEが高いからなのかもしれない。」という可能性を見逃してはいけません。
(2)PBRからROEの妥当性を見る
ある投資家は株主利益を重視する経営をしているという点から、ROEの高さだけで優良な投資先を決めるかもしれませんが、投資リターンの追及にはそれでは不十分です。その優良ぶりは株価(PBR)に既に織り込まれているかもしれないからです。
クオンツファンド理論によると、長期的に見て高PBR銘柄群は低PBR銘柄群にパフォーマンスが劣後するという結論を得ています。したがって、PBRの高さを無視して、ROEが高い企業にだけ投資していると、平均的には芳しくない投資収益で終わる可能性があるのです。
以上の2つの視点が理解できれば、平均的な市場参加者よりも確実にPBRとROEの関係についての本質に迫っていると私は思います。